iPhone写真の未来VOL.2|日本の インスタグラマー コミュニティ IGersJP
しばらくぶりでございます。
勝手気侭な考察の第二回目です。
先日、出荷時に戻す際に、入っていた写真をどこにも同期していなかった為泣く泣く捨てる事になった。
自分でいうのもなんだが、その中には実にいい写真が入っていた。
それはスラム街、山谷で撮ったある人の最期なのだ。
しかもiPhoneだから撮れたその写真、実に惜しい。
前回から少し時間が経ってしまったが、その間にもますます「iPhone写真」という言葉自体が陳腐なものになってきているのを感じる。
そんな中、iphone好きならもう耳にしているかもしれないが、ちょっと前に衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。
Twitterで、「もしオイラが通信社の社長だったら、各カメラマンにiPhoneを十台ずつもたせたせるよ。その方が効率いいではないか」なんて冗談半分で書いたら、まさかそれが現実のものになってしまったのである。
1948年設立の老舗新聞社、シカゴ・サン・タイムズが、写真部員を全員解雇し、残った記者に「iPhone撮影の基礎」(“iPhone photography basics,”)という訓練を受けさせていることが明らかになった、というニュースだ。
解雇したカメラマンの中には、ピューリッツア賞を手にしたジョン・ホワイト氏までもが含まれているというから驚きである。
しかし、この事件が「iPhone写真は、もう一般的なカメラで撮影されたものの代用になる」と考えるのは早とちりに思う。
これは私の憶測だが、iPhoneというツールが持つ、優れた拡散性と、優れた報道写真は別物であるという配慮なのであろう。
この処置には賛否両論あるものの、iPhone写真の未来を考えるにはもってこいの話であるので、この度引用させてもらった。
元写真部員の1人が「良く言っても、どうしようもなく無知。悪く言えば、アホの極みだ」
(“idiotic at worst, and hopelessly uninformed at best,”)と発言しているが、ニュース番組よりTwitter情報の方が早い様なこの時代、仕方ないのかもしれない。皆様はどうお考えでしょうか?
(私なりにも、興味がある問題なので、@nerorismまでご意見頂ければと思います。)
さて、前回、iPhone黎明期に流行ったアプリから、iPhone写真がどのような位置づけであったかを考えてみた。
私が思うに、iPhone写真というカテゴリーを形成する大きな要因の一つは、豊富に存在する加工アプリの存在である。
撮ることより、どう見せるか、加工する事に重きが置かれ、おおよそ撮られたデータは「素材」でしかない。
しかし、そういう考えは今まで純粋に写真をやって来た層の言い分なのかもしれないとも、最近にして思うようになった。
いかに見せるか、という点では、iPhone写真家に学ぶべきことは多いのもこれまた、確かなことなのである。
そしてもう一つ。
写真を大きく、自他いずれにせよ、その内面を浮き彫りにさせる「内面的」な写真と、あくまでモノの形状をたどった「表層的」写真とに分類するにして、iPhone写真の多くが表層的写真に終止しているという現状もある。そして、表層的写真は加工によってよりドライになる。これはまるで、内面に立ち入る事への畏怖から生じるようで、現代社会の反映のように思えてならないのだ。
言い換えると「シリアスさが足りない」ともいえるかもしれない。
Instagram見ていて、日本の方でもシリアスなものを扱っている人はいる。何名かウォッチしている人はいるのだが、どうしてか分からないが、その大半が女性なのだ。そして海外と比較するとまだ日本はレベルが低いように思う。
しかし、それはアップする側の問題でなく、海外ならそれが本職につながるのかもしれないが、日本ではそれが包含関係として成立していないのだろうと察する。Youtubeからプロのアーティストが誕生するように、Instagramからもプロが出ていいと思うのだが。
先に述べた通り、多くの加工アプリは画質の悪さを補間する役目があった。
しかし、iPhone5sだか6がもうすぐ出るこの頃、相当に画質は良くなった。いや、良くなってしまった、というべきか。iPhoneの画質が向上することと、iPhone写真の崩壊が比例しているのは、まこと皮肉なことだ。iPhone写真唯一のボーダーが加工するという行為であれば、iPhone写真はただの写真になってしまったというわけだ。ただの写真になってしまったから良い悪いではないが、そうなるとiPhone写真は消滅するか、独自の要素を付加していなくてはならなくなるのだろう。
もう転換期はすぐそこに来ている。
撮影はiPhone3Gs及び4s
新納 翔(http://nerorism.rojo.jp/)
つづく
【えんぞう注釈】
新納さんの指摘は的を得ているというか、ずばりそういうことだと思う。
皮肉にもトイやアナログチックなフィルターが掛かる「加工」を前提にパーツを切り取ってくる作業が、特にスクエアフォーマット特有の天地が無い世界に親和性が高そうだ、という憶測も出来る。未だに撮影した写真をわざわざスクエアにトリミングしてから加工できるフィルターアプリが登場するので、何かスクエアに呪縛があるのかもしれないとすら思う。
来月iPhone写真集「阿佐ヶ谷住宅」を出版するけれど、多分iPhone写真とかiPhoneographyと呼ばれる分野はえんぞう個人も無くなっていくと思うし、モバイルフォトグラフィというのは機材の属性と言うよりは寧ろ態度の属性なので、近い将来、一眼に対するコンパクトの様に、写真界隈でも「そーいう区分のカメラのひとつ」になっていくものと思う。でなければもはや写真関連のエコシステムが回らないからである。
とはいえモバイルフォトのカジュアルさはそこを突き詰めていくと、新納さんの言うように表層の極みに到達できるアートでもある。阿佐ヶ谷住宅然り山野しかり、「絶対に俺の内面は見せない」で写真然とさせる一つの作法を徹底するえんぞう個人に親和性が高いのだ。人気記事ベスト10だぜ。:
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